社長のための会社にお金を残す節税戦略 【第3回】役員報酬は“節税の武器”ではなく“戦略の中核”
第3回|役員報酬は“節税の武器”ではなく“戦略の中核”
〜「なんとなく決めている」では会社はお金が残らない〜
「とりあえず役員報酬を上げて法人税を減らす」という発想は、実はとても危険です。
役員報酬は単なる節税手段ではなく、「法人と個人のお金をどう最大化するか」という戦略の中核にあります。
報酬設計を誤ると、法人のキャッシュが減るだけでなく、個人の税負担が増えるなど、“トータルで損”をしてしまうことも。
大切なのは、法人と個人を合わせたお金の流れを最適化することです。
今回は、節税だけでなく会社の未来を変える「役員報酬設計の本質」に迫ります。
目次 (前回【第2回】税金は“敵”ではなく“味方”であるの内容はこちらから見れます)
- はじめに:「利益が出ているのに、お金が残らない」の真犯人
- よくある落とし穴①:利益を減らすために報酬を増やす
- よくある落とし穴②:報酬を低くして会社に残す
- 正しい役員報酬設計とは「法人と個人のトータル最適」
- 具体事例:報酬の見直しでキャッシュが劇的に変わったA社
- 将来を見据えた報酬設計が「出口戦略」を強くする
- 社長が今すぐチェックすべき3つの質問
- まとめ:報酬は給料ではなく「戦略」
- 今の報酬設計を見直すタイミングです
はじめに:「利益が出ているのに、お金が残らない」の真犯人
「利益は出ているのに、なぜかお金が残らない」──そんな悩みを抱える中小企業は少なくありません。
その原因のひとつが、社長自身の「役員報酬の設計」です。
実は、役員報酬の決め方ひとつで、会社のキャッシュフローも、社長個人の資産形成も大きく変わります。
にもかかわらず、「前期と同じでいい」「税理士に任せている」と深く考えずに決めているケースが多いのが現実です。
役員報酬は単なる「給料」ではありません。
役員報酬は、会社と社長の“お金の流れ”を設計する最重要の戦略ツールなのです。
よくある落とし穴①:利益を減らすために役員報酬を増やす
多くの経営者が陥るのが、「法人税を減らすために役員報酬を増やす」という考え方です。
「今期は利益が出すぎたから、自分の報酬を上げて節税しよう」──そんな判断をしていませんか。
確かに、法人税は一時的に減ります。
しかし、その裏で次のような問題が起こっています。
- 個人の所得税・住民税・社会保険料が大幅に増える
- 会社の内部留保が減り、投資余力が下がる
つまり、「節税したつもりがトータルでは損をしていた」というケースが多いのです。
役員報酬は、税金を減らすための手段ではなく、法人と個人のキャッシュを最大化するための設計戦略として考える必要があります。
よくある落とし穴②:報酬を低くして会社に残す
一方で、「所得税・住民税・社会保険料を払いたくないから、役員報酬は最低限にして会社に残す」という発想も危険です。
一見、会社にお金が残るように思えますが、実は次のリスクを抱えます。
- 社長個人の可処分所得が減り、資産形成が進まない
- 将来の退職金原資が積み上がらない
- 保険や投資を活用した財務戦略の幅が狭まる
法人と個人のどちらかに偏った設計では、「お金の総量」は増えません。
重要なのは、法人と個人を一体として最適化することです。
正しい役員報酬設計とは「法人と個人のトータル最適」
本質的な報酬設計とは、「法人のキャッシュフロー」と「個人の手取り・税負担」をセットで考えることです。
つまり、「法人と個人を別々に見る」のではなく、ひとつの経済圏として設計するということです。
報酬設計で見るべき3つの視点
- 法人の利益と内部留保のバランス
- 個人の所得税・社会保険料の負担
- 将来の退職金や資産形成との連動
この3つのバランスを整えることで、会社にも個人にもお金が残る「仕組み」をつくることができます。
具体事例:報酬の見直しでキャッシュが劇的に変わったA社
ある年商2億円の製造業A社。
税引前利益は2,000万円ほどでしたが、社長は「税金が高い」「手元資金が増えない」と悩んでいました。
そこで、法人・個人のトータル最適化を目的に、次のような見直しを行いました。
- 役員報酬を月120万円 → 月90万円に引き下げ
- 浮いた法人資金を退職金積立・保険に回す
- 個人の資産形成を別ルートで設計し、社会保険料の負担を削減
結果、法人の手元資金は年間約360万円増加。
同時に、社長個人の手取りも約80万円増加しました。
「報酬を減らしたのに、会社にも自分にもお金が残る」──これが、戦略的な報酬設計の力です。
役員報酬は単に「多い・少ない」ではなく、会社全体の資金設計の起点となる重要な要素です。
将来を見据えた報酬設計が「出口戦略」を強くする
役員報酬は、目先の税金対策だけでなく、退職金・事業承継・相続などの“未来”に直結します。
長期的な視点で考えるべきポイント
- 退職金の原資をどのように積み上げていくか
- 報酬と退職金のバランスをどう取るか
- 自社株や承継対策をどの段階から始めるか
ここまで見据えて設計している会社は、長期的にキャッシュを残せます。
逆に、毎年「とりあえず決めている」会社は、未来の選択肢がどんどん狭まっていきます。
社長が今すぐチェックすべき3つの質問
- 役員報酬は「法人と個人のトータル最適」という視点で設計しているか?
- 将来の退職金や承継まで見据えて金額を決めているか?
- 「税金を減らすために報酬を上げる」以外の報酬設計の目的を、明確に言語化できますか?
一つでも「いいえ」があるなら、見直す余地があります。
報酬設計は「税額調整」ではなく、「会社の未来設計」です。
まとめ:報酬は給料ではなく「戦略」
役員報酬は、単なる社長の給料ではありません。
それは、会社と社長の未来を左右する「戦略的資金配分ツール」です。
報酬の設計次第で、
- 会社の資金繰り
- 社長の手取り
- 将来の退職金
すべてが変わります。
“前例踏襲”で決めるのではなく、数字をもとに戦略的に設計する。
それが、強い会社をつくる第一歩です。
今の報酬設計を見直すタイミングです
あなたの会社の役員報酬は、本当に最適ですか?
利益が出ているのに資金繰りが厳しい会社は、「報酬設計」に原因があるかもしれません。
当社では、法人と個人のトータル最適診断を行っています。
数字をもとに、「どの報酬バランスが最もキャッシュを残すか」を一緒に確認しましょう。
一度立ち止まり、今の設計が未来の戦略になっているか見直してみませんか。
初回相談は無料です。お気軽にこちらまでお問い合わせください。
