社長のための会社にお金を残す節税戦略 【第4回】役員退職金は“最強の節税戦略”である
第4回|役員退職金は“最強の節税戦略”である
社長が引退時に受け取る「役員退職金」は、最も強力な節税戦略のひとつです。損金算入が可能で、かつ個人側の税負担も軽く抑えられるため、法人・個人双方にメリットがあります。にもかかわらず、多くの会社が十分な準備をしていません。退職金は「いくら受け取れるか」ではなく、「どのように準備するか」で結果が大きく変わります。今回は、なぜ役員退職金が最強の節税武器と呼ばれるのか、その本質と活用の考え方を解説します。
目次
(前回【第3回】役員報酬は“節税の武器”ではなく“戦略の中核”の内容は、こちらから見れます)
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- はじめに:「退職金=引退時のお金」ではもったいない
- 退職金が「最強の節税戦略」と呼ばれる3つの理由
- なぜ多くの社長が退職金を活用できていないのか
- 設計のポイント①:「いくら払えるか」ではなく「いくら払うべきか」
- 設計のポイント②:「退職金原資」をどう積み立てるか
- 具体事例:5,000万円の退職金で税負担と株価を同時にコントロールしたB社
- 社長が今すぐ考えるべき3つの質問
- おわりに:「退職金=引退の話」ではない
はじめに:「退職金=引退時のお金」ではもったいない
「退職金」と聞くと、多くの社長は「引退するときにもらうお金」と考えます。
確かにそれは間違いではありませんが、それだけでは、あなたの会社は大きなチャンスを逃している可能性があります。実は、役員退職金は中小企業経営における“最強の節税戦略”です。
しかもそれは、単に税金を減らすだけでなく、「会社の財務体質を強くし」「社長個人の資産形成を進め」「事業承継の準備まで整える」という、他の制度にはない圧倒的な効果を持っています。
この記事では、役員退職金がなぜここまで重要なのか、その本質と活用のポイントを解説します。退職金が「最強の節税戦略」と呼ばれる3つの理由
役員退職金が他の節税策と決定的に違うのは、「法人と個人の双方に大きなメリットがある」点です。
大きく分けて、次の3つの力があります。① 法人の損金にできる数少ない“大型経費”
退職金は、法人から見れば「損金」として計上できる数少ない支出です。
例えば、1,000万円の退職金を支払えば、そのまま1,000万円が経費となり、法人税を大きく抑えることができます。
しかも、他の経費のように“使ったら終わり”ではなく、そのお金は社長個人の手元に資産として残ります。
つまり、法人の節税と個人の資産形成を同時に叶えることができるのです。② 個人の受け取り時の税負担が極めて低い
役員退職金は、個人の側にも大きな税制メリットがあります。
給与や賞与と違い、「退職所得控除」という大きな優遇措置があるため、数千万円単位の退職金でも実質的な税負担は10〜20%程度に抑えられるケースが珍しくありません。
これは、給与で同額を受け取った場合と比べて、手取りで何百万円、場合によっては1,000万円以上の差が出ることもあります。③ 事業承継・自社株対策の“出口戦略”になる
退職金は、単なる「社長の引退資金」ではありません。
株価対策や事業承継においても、非常に重要な役割を果たします。
会社の評価額が高くなりすぎると、後継者への自社株移転が難しくなりますが、退職金を支払うことで純資産が減少し、結果として株価が抑えられます。
これは、承継時の贈与税・相続税の負担を軽減する強力な手段になります。
このように、役員退職金は「節税」「資産形成」「承継対策」という3つの要素を一つでカバーできる、非常に強力な武器なのです。なぜ多くの社長が退職金を活用できていないのか
ここまでの話を聞くと、「なぜそんなに有利な制度を使わない会社があるのか?」と不思議に思うかもしれません。
理由はシンプルで、多くの社長が「退職金を“引退時の話”としか考えていない」からです。退職金は、引退の何年も前から設計し、準備しておくものです。
毎期の利益計画、役員報酬の設計、保険の活用などと連動して初めて、効果を最大限に発揮します。
「引退が近づいてきたから考えよう」と思った時点では、十分な原資を準備できなかったり、節税効果を享受できなかったりすることが多いのです。設計のポイント①:「いくら払えるか」ではなく「いくら払うべきか」
退職金を考えるとき、多くの社長が「いくら払えるか」と考えます。
しかし大切なのは、「いくら払うべきか」という逆算の視点です。- 社長の勤続年数や報酬額から算定できる「適正退職金」
- 承継後の会社財務に無理のない支給額
- 税務上も問題が生じない金額と支払いタイミング
これらを踏まえて「適正な水準」を設計することで、税務リスクを避けつつ最大限の効果を引き出せます。
設計のポイント②:「退職金原資」をどう積み立てるか
退職金の支払い原資をいきなり準備するのは簡単ではありません。
そのため、時間をかけて計画的に積み立てていくことが重要です。
よく使われる手段の一つが「法人保険」を活用した原資準備です。
保険を単なる節税商品ではなく、「退職金という出口戦略のための積立手段」として位置づければ、毎期のキャッシュフローに負担をかけずに資金を準備できます。
このように、「いつ・いくら・どうやって準備するか」を早期に設計しておくことが、退職金戦略成功の鍵になります。具体事例:5,000万円の退職金で税負担と株価を同時にコントロールしたB社
ある年商3億円の製造業B社は、創業社長が65歳を迎えるにあたり、5,000万円の役員退職金を支給しました。
この支払いによって、法人は約1,500万円の法人税を圧縮し、社長個人も税率20%未満で受け取ることができました。
さらに、支払いによって会社の純資産が減り、株価評価額が大幅に下がったことで、後継者への自社株移転がスムーズになりました。
B社は「税金対策」「資産形成」「承継対策」の三拍子を同時に叶え、まさに退職金を戦略として使いこなした好例です。社長が今すぐ考えるべき3つの質問
あなたの会社は退職金という武器を本当に活かせているでしょうか?
次の3つを自問してみてください。- 自分の退職金の「適正額」を把握しているか?
- 退職金原資の準備を“今”から始めているか?
- 承継・自社株対策まで見据えた設計ができているか?
一つでも「いいえ」があれば、今こそ見直すチャンスです。
おわりに:「退職金=引退の話」ではない
役員退職金は、「社長が引退するときにもらうお金」ではありません。
それは、「会社の未来を守りながら、社長個人の未来も守る」ための戦略そのものです。
税金を減らし、キャッシュを残し、資産を形成し、承継をスムーズにする――。
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